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アフガニスタンの風 ~バロチスターン:クエッタ~ 2

 この写真も掲載時と異なります。先日さがしものをしていたら、ネガで撮ったこの写真を発見しました。本文に記載されているマリアバードという地区です。
サンダル屋のラザーの写真はいつか投稿しますね。

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■ ハザラ族とマリアバード

 クエッタの街には日本人によく似たハザラ族が多く住んでいる。彼らの故郷は中央アフガニスタンであるが、ソ連侵攻とその後の内戦によって、パキスタンにもコミュニティを形成するようになった。モンゴル系の彼らは、チンギス・ハーンの軍隊が侵攻した後に現地に居残った末裔であり、モンゴル人の軍隊の編成単位が千人であったことから、ペルシャ語の千(へザール)が彼らの民族名の由来となっている、と多くの書物に書いてあるが、おそらくもっと昔からその地域に住んでいたのではないだろうか?バローチ族やパシュトゥン族といったインド・ヨーロッパ語族のアーリア系の民族が多いこの街で、モンゴル系の親しみやすい顔にホッとさせられることがある。そんな彼らも同様に日本人には親しみを覚えるのか、僕が日本人だと知ると「ジャパン、コリア、チーン(中国)、ハザラ、、、モンゴール!」と、同じモンゴル系民族であることをことさら強調する。そのことに対しては彼らが僕たち日本人に対して好意を持ってくれていることが感じられうれしいのだが、反面他の民族とは溝があるのではないか、と感じることがあるのだ。長引く戦争で幾多の殺し合いがあり、民族間にもお互いに不信感を生み出したことは間違いないと思う。平和な時代にアフガニスタンで生まれ、生活していた人たちは、「その当時は冗談で、お前は○○族やから、、、」と言い合ったことはあるが、今ほど民族や宗教で区別することがなかった、と良き時代を懐かしむように語るのだ。戦争の悲劇は、結局はお互いを許すことでしか解決できない、と頭ではわかるのだが、その関係が修復するのはまだ長い道のりがかかるのかもしれないと思わずにはいられなかった。

 僕がハザラ族と初めて知り合いになったのは、カンダハリー・バザールの近くにあるサンダル屋だった。いつものようにブラブラと街を歩いていると、「オ~イ、チャイを飲んでけよ。」と声をかけてくれたのが当時十六歳のラザーだった。お互い英語がそれほど達者でなかったため、ある程度の話し以上は難しかったが、それでも毎日その近くを通れば彼の家族が働いているサンダル屋に立ち寄って、彼の親やおじいちゃん、親戚の人たちの作業風景を眺めていた。大量生産ではなく、自分たちだけの力と技で、かたちある何かを作りあげていることが好きであった。異国にいて、旅人をほっとさせるもの、それは当たり前の現地の人たちの仕事風景であり、生活であると僕は思う。それにしても、彼らが作っているサンダル----それ以外にもゴム製の甕もある----の元の姿は自動車の古タイヤなのだ。不要になったタイヤにまだ使い道があったとは、と人々の生活力と智恵にうれしくなってしまった。

アフガニスタンの風 ~バロチスターン:クエッタ~ 2_f0057070_19581850.jpg

↑ ハザラ族の青年たち。彼らが住むマリアバードの向こう側がクエッタの中心部です。
  いつもバス(片道約6円)で行くのですが、歩くと30分くらいでしょうか。

 ラザーの家は街の東部の岩山の麓にあった。その地区は「マリアバード」と呼ばれ、ハザラ族しか住んでいないようだった。路地を抜け、どんどん上を目指して登っていくと、ようやく家を建てることができない場所まで行きついたのだが、そこからはクエッタの街とそれを取り囲む広大な大地を一望できた。単純に大きさだけ考えれば、僕の住む奈良盆地とほぼ同じくらいだと思うのだが、受ける印象が全く違っていた。たぶん、それはそこにある色彩の違いによるものだと思うのだが、青い空と赤褐色の大地と街に包み込まれた空間は妙な安らぎとキュンと胸を締めつけられる切なさがあった。街の喧騒と人々の視線に疲れたとき、僕はしばしばこの場所を訪れた。どんなに親しい人と過ごしていても解消されることのないものはここで不思議と癒されたのだ。

(つづく)
by charsuq | 2006-02-24 20:00 | | Comments(2)
Commented by orientlibrary at 2006-02-25 10:48
青い空と赤褐色の大地と街に包み込まれた空間は妙な安らぎとキュンと胸を締めつけられる切なさがあった・・・ イスラム圏や西アジア、部族の世界に惹かれる人たちには、すごく共感する部分ではないでしょうか。もちろん私もそうです。
なんなんでしょう。美しさという面ではヨーロッパなど世界にきれいな街はたくさんあります。でもこのマリアバードの土色の街と、無垢ささえ感じさせる青年の表情を見ると、どうしようもなく惹かれます。
きれいかどうか、よりも、惹かれるかどうか。なぜ惹かれるか、理由はわかりません。「きっと前世は中央アジアにいたんだ」という非科学的、情緒的な思いが、今の自分にはいちばんすんなりきます。
Commented by charsuq at 2006-02-25 20:00
「なんでそんな地域に何度も行くの?」と尋ねるひとには僕は十全に答えることができないけど、惹かれるんですよね、確かに。「前世は中央アジア」って感覚すごくわかります。orientlibraryさんのブログを拝見していてあつい想いがひしひしと伝わってきますが、それだからこそ新しい出会い、不思議な出会いにつながっているような気がします。「好き力」という表現をされておられましたが、惹かれることに対して前向きに突き進んでいけば、きっと面白くてありがたい毎日が続くのではないでしょうか?


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