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「天女湯おれん」 諸田玲子

 『湯屋』という言葉が僕は好きなのだ。

 料金をとって入浴する意味では銭湯や風呂屋も同じなのだが、何故かこの言葉だけは他より情緒を含み持ったところを想像してしまう。

 1830年前後の江戸。
天女湯にはある秘密がある。ある事情でお金が必要な女に対して女将おれんは男性を紹介するという裏の顔を持っている。
湯屋の裏には隠し部屋があり、そこで色事がくりひろげられる。

 おれんの母親は男に乱暴されて自害している。しかし真犯人は捕らえられず、植木屋の倅に罪をかぶせて事件を闇に葬ってしまわれた。そのため彼女はお上を信用していないが、理不尽な世の中において自分をしっかりと持ち凛として生きている。

 一旦その快楽を味わってしまって自制できないでいる不幸な女がいるが、おれんはあくまで借金返済といったある目的のためには手を貸すが、夫がいながら性を享受しようとするものにはぴしゃりと断る強さがある。

 どろどろとしたいやらしさがなかったので、それをもの足りないと思う人はいるかもしれないが、僕は充分に楽しめた一冊だった。たまにはこういう本もいい。
by charsuq | 2006-03-18 11:27 | 雑記 | Comments(0)


いつか また どこかで


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