チェイシング・アフガン その3
■ ヘラート(アフガニスタン) / 2005.5.1
この日僕は「ジャム・ホテル」に泊まろうと思っていた。
ラワールピンディの「ポピュラーイン」、ペシャワールの「ツーリストイン」、イスファハンの「アミールカビール」のようにアジアを横断するバックパッカーたちが宿泊し情報ノートがあると聞いていたので少しでも現在の状況を確認しておきたかったのだ。
マスジェデ・ジャメまで辿りつけば簡単にわかるものだと思っていたが、何人に聞いてもそんなホテルは知らないと言われ、探すのに時間がかかってしまった。
薄暗い階段を上っていくとフロントがあり、そこには優しげな中年男性が立っていた。
「部屋はどうであれ、いい宿かもしれないな」
ちょっと期待して値段を聞いてみたが、彼は英語を理解しないのだ。
おいおい、ここにはよく外国人がくるんじゃないの?と心の中で思いながら
「イェク・シャブ・チャンド・アスト?(一泊いくらなんだい?)」
とダリ語で尋ねると
「300アフガニー」
と言うではないか。
ベットがふたつ並んでいる部屋でトイレ・シャワー共同でちょっと高い気がしたので
「200にしてよ」
と言ってみる。
「君は何泊するんだい?10泊以上だったらまけてもいいが、それ以下だったら無理だよ」
まあ仕方ないか、別の宿をあたるのも億劫だったし便利な場所にあるからと自分に言い聞かせてこの値段でよしとした。
これで今晩の宿は決まったと安心したとたん朝食抜きのおなかが急にすいてきて、部屋にバッグを置いてから近くの食堂に入った。
「エムルーズ・チ・ダーリー?(今日は何があるんだい?)」
「パラオ(炊き込み御飯)、カバブ(羊の串焼き)、モルグ(鶏肉)、コフタコルマ(ミンチ肉の煮込み)」
と相変わらずメニューの少なさとその少ないメニューがどの街のどの食堂でもほとんど同じであることに、笑ってしまいそうになる。
店先で焼いているカバブのおいしそうな匂いがしていたのでそれと緑茶をもらうことにした。12本にナンとお茶がついて60アフガニー。味は悪くなかったのだが、音楽をガンガンにかけていたので、食後ゆっくりすることもできず、お茶を飲み終わるとすぐに食堂を出た。
「さて、どうしようか?」
何か面白そうなことに出会わないかなと期待しながら歩き出したところ、店構えのよさそうな絨毯屋を見つけたので入ってみることにした。壁にかかっているもの、壁際に積んであるものをざっと見渡し終わったところで店主が
「やあ、何を探してるんだい?」
と近寄ってきた。
「そうですね、実は自分が何を探しているのかわからないのですよ。ただ、古い絨毯に興味があります」
と答えると店主は壁際の棚に掛けてあった布をめくって奥に隠している絨毯を取り出した。
(つづく)
この日僕は「ジャム・ホテル」に泊まろうと思っていた。
ラワールピンディの「ポピュラーイン」、ペシャワールの「ツーリストイン」、イスファハンの「アミールカビール」のようにアジアを横断するバックパッカーたちが宿泊し情報ノートがあると聞いていたので少しでも現在の状況を確認しておきたかったのだ。
マスジェデ・ジャメまで辿りつけば簡単にわかるものだと思っていたが、何人に聞いてもそんなホテルは知らないと言われ、探すのに時間がかかってしまった。
薄暗い階段を上っていくとフロントがあり、そこには優しげな中年男性が立っていた。
「部屋はどうであれ、いい宿かもしれないな」
ちょっと期待して値段を聞いてみたが、彼は英語を理解しないのだ。
おいおい、ここにはよく外国人がくるんじゃないの?と心の中で思いながら
「イェク・シャブ・チャンド・アスト?(一泊いくらなんだい?)」
とダリ語で尋ねると
「300アフガニー」
と言うではないか。
ベットがふたつ並んでいる部屋でトイレ・シャワー共同でちょっと高い気がしたので
「200にしてよ」
と言ってみる。
「君は何泊するんだい?10泊以上だったらまけてもいいが、それ以下だったら無理だよ」
まあ仕方ないか、別の宿をあたるのも億劫だったし便利な場所にあるからと自分に言い聞かせてこの値段でよしとした。
これで今晩の宿は決まったと安心したとたん朝食抜きのおなかが急にすいてきて、部屋にバッグを置いてから近くの食堂に入った。
「エムルーズ・チ・ダーリー?(今日は何があるんだい?)」
「パラオ(炊き込み御飯)、カバブ(羊の串焼き)、モルグ(鶏肉)、コフタコルマ(ミンチ肉の煮込み)」
と相変わらずメニューの少なさとその少ないメニューがどの街のどの食堂でもほとんど同じであることに、笑ってしまいそうになる。
店先で焼いているカバブのおいしそうな匂いがしていたのでそれと緑茶をもらうことにした。12本にナンとお茶がついて60アフガニー。味は悪くなかったのだが、音楽をガンガンにかけていたので、食後ゆっくりすることもできず、お茶を飲み終わるとすぐに食堂を出た。
「さて、どうしようか?」
何か面白そうなことに出会わないかなと期待しながら歩き出したところ、店構えのよさそうな絨毯屋を見つけたので入ってみることにした。壁にかかっているもの、壁際に積んであるものをざっと見渡し終わったところで店主が
「やあ、何を探してるんだい?」
と近寄ってきた。
「そうですね、実は自分が何を探しているのかわからないのですよ。ただ、古い絨毯に興味があります」
と答えると店主は壁際の棚に掛けてあった布をめくって奥に隠している絨毯を取り出した。
(つづく)
by charsuq
| 2006-03-17 19:33
| 旅
|
Comments(6)
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orientlibrary at 2006-03-17 23:11
ヘラートってイランに近い方でしたよね? 食堂のメニュー、、ほんとにどこもこんな感じで同じもの?? ちょっときついなあ。。。憧れのアフがニスタンですが、行けたときにはカロリーメイト持参かも、、野菜が少なくありませんか? 果物でカバー? 緑茶はおいしいですか? 食べ物のことばかりですいません〜! 60アフガニーって、日本円でいうといくらくらいになるんですか?
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charsuq at 2006-03-18 10:36
いやいや食べることは旅する上で大事ですからまずそこに興味がわくのは当然ですよ。僕が知りうる限り外食で野菜をメインとしたものはないですね。カブールで出稼ぎに来ている知人の部屋に泊まったときはスープにナンを浸しただけ、とかナンとお茶とフルーツだけ、とかパラオのみとか、でしたね。質素でした。緑茶はうすい!っすよ。それとあまりミルクティーがないんですよね、あの国は。カブールでは朝にハンマームに行った帰りに「カラパチャ(パヤ)」というぶよぶよとした肉の脂肪分?髄?を彼らが朝食でこれを好んで食べているのは「朝にこれですか?」とびっくりしました。うまかったけど。2005年5月は1US$=49アフガニーでした。僕が旅した限りにおいて新彊は中国だから別枠として、ウズベキスタンとトルコの食事の美味しさは他のイスラーム世界の料理と比べ物にならなかった(あくまで外食での比較)。そういえばアフガンで料理のうまいのはトルコ系の人たちと言っている人もいたな・・・。
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orientlibrary at 2006-03-18 23:45
以前見たアフガニスタンのドキュメンタリー映画で、職を得るために街角に並んでいる男たちが、口々に「もう半年も肉を食べていない」と訴えていました。みな痩せていて、冬の厳しい寒さの中で脂分をとらないのは、体力的にきついだろうと思いました。ベジタリアンの多いインドは野菜だけでやっていける(むしろその方がいい)気候的な背景もあるのかもしれません。ナンとチャイと果物でいいや、と思うのは旅行者だからですね、、。働く人たちが、もっと肉類が食べられるようになるといいですね。ウズベクやトルコの食・・・もともとの素材もいいような気がします。
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charsuq at 2006-03-19 06:58
それ何という映画ですか?たぶん僕は観ていないと思うので是非教えてください。彼らって大家族ですよね。以前知人と話をしていて子供、親、兄弟、その他を合わせると20人家族くらいになってしまう。肉を買わなくてもナン、果物、ミルク、ヨーグルトなんかでも20人分だと結構な値段になってしまう。そこに色々と住居費や店舗に支払うお金などが加わって、安定した収入がない人はかなり厳しい状況と思います。カンダハールでは赤ん坊を抱えて地面にうずくまりながら物乞いしている女性もいました。たぶん毎日は動物性タンパク質を摂取していない人が多いと想像します。食事もそうですが、まずは治安の安定が安定し、旱魃がないことを切に祈っています。旅をしていて貧困と直面するときがありますが、ほとんど何もしてあげれないのって本当につらい・・・。
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orientlibrary at 2006-03-19 20:46
映画、去年アフがニスタン映画祭で見たうちのどれかなんですが、なにしろ一日に10本近く一気に見たので、タイトルがわからなくなりました・・・
映画祭は予想以上に好評だったようで、第2弾が開催されるようです。主催団体をチェックしておけば、そのうちに関西でもあるかも、、、
http://www.cross-arts.org/
「もう半年も肉を食べていない」のあとに「力が出ない」とも訴えていました。それにしても、健忘症の私がこういうことってよく覚えてますね〜・・・自分で感心、、、
食事の60アフガニって、やはりインドやイランに比べたら、高い気がしましたけど、、。ケバブってごちそうだから?? イランのナンって1枚数円レベルだと思います。聞きかじりですが、国の補助が主食や石油に出ていると聞いた気がします。やはりイランは基本的にお金持ちだと思ってしまいます。産油国ですもんね〜、、
映画祭は予想以上に好評だったようで、第2弾が開催されるようです。主催団体をチェックしておけば、そのうちに関西でもあるかも、、、
http://www.cross-arts.org/
「もう半年も肉を食べていない」のあとに「力が出ない」とも訴えていました。それにしても、健忘症の私がこういうことってよく覚えてますね〜・・・自分で感心、、、
食事の60アフガニって、やはりインドやイランに比べたら、高い気がしましたけど、、。ケバブってごちそうだから?? イランのナンって1枚数円レベルだと思います。聞きかじりですが、国の補助が主食や石油に出ていると聞いた気がします。やはりイランは基本的にお金持ちだと思ってしまいます。産油国ですもんね〜、、
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charsuq at 2006-03-19 22:51
映画を観ることができればいいな~。
皆が思っているほどアフガンって物価は安くないですよ。パキスタンのクエッタのアフガン料理店でケバブとコーラとナンでちょうど1ドルくらいだった記憶があります。旅する限りにおいては、インド、パキスタン、イランってかなり安いと思います。カブールは別ですが宿を除いて街にレストランがほとんどない。一般の人はあまり外食しないという印象でした。イランと比べたらアフガンはあまりにもかわいそうですよ・・・。
皆が思っているほどアフガンって物価は安くないですよ。パキスタンのクエッタのアフガン料理店でケバブとコーラとナンでちょうど1ドルくらいだった記憶があります。旅する限りにおいては、インド、パキスタン、イランってかなり安いと思います。カブールは別ですが宿を除いて街にレストランがほとんどない。一般の人はあまり外食しないという印象でした。イランと比べたらアフガンはあまりにもかわいそうですよ・・・。
いつか また どこかで
by charsuq
トライバルラグの販売サイト
オールド・アンティークのトライバルラグ&テキスタイルを販売しています。非売品もあり、ほとんどは値段を表示していませんが、お気軽にお尋ねください。Gallery Forest
1.私へのメールはこちら。その際はタイトルに「旅と絨毯とアフガニスタン」の文字を入れてください。そうでなければ見ずに削除してしまうかもしれません。
2.写真の無断転載禁止。
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