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One more prayer rug  1

 映像でご存知の方も多いが、イスラームの民は大地に跪いて礼拝する。聖地メッカの方向に向かって頭を地面や床につけるような姿勢で祈る姿は、何故か僕たちの心をゆさぶる。

 アフガニスタンやパキスタンの人は鞄というものをあまり持たない。ショールが風呂敷になり、礼拝するときの敷布となる。

 イスラーム世界を旅するとき、宿泊するホテルには機械織りではあるが、部屋に礼拝用の絨毯やマットが備え付けられている。それほど彼らにとって「祈る」ということは「日常」であるのだ。

 絨毯のなかでも僕は「礼拝用絨毯」に何故か惹かれる。高くて手が出ないものもあったり、と個人的にはほとんど所蔵していないが、一枚でも多く見たいという思いがある。

 「One more prayer rug」
僕がどこまで書けるかはなはだ疑わしいが、僕自身の「知る」「出会う」ために書きたいと思う。もちろん、それを楽しんでいただければ幸いです。

 今回紹介する絨毯は今年のGWに購入したもの。同じようなデザインのものを「caffetribeさん」が所蔵されて、大阪で見る機会があった。西部アフガニスタンに暮らす「タイマニ(taimani)」と呼ばれる民族による礼拝用絨毯である。大きなグループとして「(チャハール)アイマク」という分類があるようで、それにはタイマニ、ハザラ(hazara)、フィローズコーヒー(firozkohi)、ジャムシーディー(jamshidi)という部族が一つの民族としてまとめている本もある。チャハールはペルシャ語で「4」を意味するが、実際は8つの部族から成立している、とも言われている。これについては僕はあまりに浅学すぎ、これからの課題であるので、今はこれ以上書かない。なお、ここでの「ハザラ」は中央アフガニスタンに暮らし、そこから都市や周辺諸国に住むようになったシーア派の「ハザラ」という民族とは異なる。
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↑ ざっくりとした織りだ。
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 上の写真で左右に数字のようなものが描かれている。これが数字だとしたら、四文字の中央のニ文字は「3」に近いが、正確な「3」の書き方ではないので疑問が残る。「1338」と強引に読めなくもない。今は確かアフガン暦では1385年であるから、50年ほど昔のものに織られたものと考えられる。これは僕が何となく想像していた年代とほぼ一致する。その下に手のようなデザインがあり、この位置に両手を置いて礼拝していたのではないだろうか。
One more prayer rug  1_f0057070_853260.jpg

 この絨毯は決して高いものではないし、タイマニの絨毯はトルクメンやバローチといった民族のものと比較して値段がつりあがるということはない気がする。素朴といえば、あまりにも素朴すぎるが、なんともアフガンの田舎で織られたという感じがするではないか。そんなところが僕は好きなんだと思う。
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↑ 「caffetribeさん」所蔵の絨毯
# by charsuq | 2006-07-15 09:00 | 絨毯 キリム | Comments(9)

チェイシング・アフガン2006 <ラフスケッチ> 16

 少年たちと別れてすぐ雨が降り出した。

 土砂降りという雨ではないが、歩道に停めてあったトラックの傍らで雨宿りをすることにした。家路を急ぐ大人や子供たち、そんな彼らの往来を眺めながらしばらく佇んでいた。

 5分くらい経過したころだろうか。少年とおじさんが僕のとなりにしゃがんだ。英語であったか、ダリ語であったか、忘れてしまったが、少し話をした。おじさんは小学校の先生らしい。そう言われてあらためて見ると、ジャケットを着ているし、なんとなく知的な感じがする。

 雨があがるとおじさんたちの家がある方向へ歩き始めた。200mくらいのところに「シャーリ・ゴルゴラ」と呼ばれる廃墟があり、そこで写真を撮らせてもらった。
チェイシング・アフガン2006 <ラフスケッチ> 16_f0057070_20565611.jpg

↑ 背景に写るものが「シャーリ・ゴルゴラ」。

 前田耕作先生の著書「アフガニスタンの仏教遺跡 バーミヤン」にはこんな記述がある。

 ガズナ朝を滅ぼしヘラートからバーミヤンに至る広大な山岳地帯を本拠とするグール朝(1144-1212)がバーミヤンを首都と定めたとき、その都城はいうまでもなくシャル・イ・ゴルゴラであった。1221年、モンゴルの大軍がバーミヤンに攻め入り、そのおり、チンギス・ハンの孫ミュテュゲンが矢に当って戦士すると、モンゴル軍は都城を攻めに攻めて落とし、都城の住民を皆殺しにし、破壊の限りをつくしてバーミヤンを去ったという。このとき、モンゴル軍が投げかけた言葉「モ・バリク」(呪われし町)がシャル・イ・ゴルゴラ(嘆きの町)の名のもとになった。歴史家ディウワニーによれば、それから四十年たっても、そこには人影がなかったという。
(※)シャル・イ・ゴルゴラ=シャーレ・ゴルゴラ (口語はシャーレに近い気がする)
チェイシング・アフガン2006 <ラフスケッチ> 16_f0057070_2155195.jpg

 それからしばらく一緒に歩いて別れることになった。

 「ホダー・ハーフェズ(さようなら)」
彼らの後姿をしばらく眺め、それから僕は畑のあぜ道を歩き始めた。

(つづく)
# by charsuq | 2006-07-14 21:10 | | Comments(0)

最近の数冊

 まったく本を読んでいないわけではない。

 ただ、新聞や通信教育を受けている「財務の基本」のテキストを読んでいたり、またはくたくたに疲れて眠り込んでいたり、と電車の中での読書の時間が以前より減っている。

 しかし、この2週間はその前より少しは本を読んでいたので、久しぶりに書いておこう。

◇ 「食べるアメリカ人」 加藤裕子著

 「どんなものを食べているか教えてくれたまえ。君がどんな人物か当ててみせよう」
フランスの美食家ブリヤ・サヴァランの言葉を引用して、「アメリカ合衆国がひとりの人間だったら・・・」という切り口で「食」を通してアメリカを見ようとしている。
 「アメリカ料理は移動用料理のようだ」という説から、開拓者たちにとって簡単で手っ取り早く、それでカロリーを摂ることができれば、それ以上は望むこともなかった。そんな合理性が根底にあるのか、僕たち日本人(ファーストフード・ジャンキーは別にして)にとって理解を超えることも少なからずある。
 決して美味しいとは言えないアメリカ料理の中で、唯一の例外はジャズの都・ニューオーリンズであるというのは、ちょっと意外。

◇ 「考える技術」 大前研一著

 露骨に記される氏の経歴から、この人の頭はどうなっているのだろうか、と思ってしまう。この中で書かれていることは、論理的思考力を身につけ、何においても知的好奇心を持ち続けなさい、ということだった。考えることにおいて、まず仮説を立て、それを立証するために徹底的に裏をとること。簡単に思えるが、これは訓練しないと難しいだろうし、今のところ僕にはそんな能力がない。「ゼロ金利が明日解除される」という中で今後の株価はどうなるのだろうか、そんなことも大前さんなら簡単に読み解いてしまうのだろうか。

◇ 「つま恋」 井沢満著

 「明日の記憶」という映画を観たからだろうか、偶然手に取ったこの本はアルツハイマー病を発症した女性と一緒に生きようとする夫の物語だった。夫はリストラされ、妻の親友と浮気をしてしまう。サイテーの男に思えるのだが、読んでいる僕は彼と妻とのあいだにあるものを優しくあたたかく感じてしまう。
 <追伸 あなたに巡りあえてよかった>
そんな言葉を伴侶にかけてもらえる男って、なんともかっこいいではないか。

◇ 「イッツ・オンリー・トーク」 絲山秋子著

 電車の中でふき出しそうになるのをこらえるのが必死だった。降りるべき駅を思わず乗り過ごしてしまいそうになった。ここではストーリーは書かない。書きにくい内容でもある。今、最も注目している作家はやはり期待を裏切らなかった。

 こんな本を読んでいた。そして、今かばんの中に入っているのは松本清澄さんの「紅い白描」である。
# by charsuq | 2006-07-13 22:34 | 雑記 | Comments(0)


いつか また どこかで


by charsuq

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