じゃらんじゃらん 12-1 _ 奈良_山の辺の道 2006.11.25
コンパクトのデジカメを手に入れてから僕はニコンの一眼レフを処分した。ある時期を除いて僕は他の人より写真をあきらかに撮っていないと思うのだが、短期の旅で一眼レフを持っていくことが次第にわずらわしくなっていたのだ。
ずいぶんと気軽に写真を撮るようになったものだと思う。その一方でずいぶんと簡単に写真を削除しているものだとも思う。削除できるから、ランニングコストがかからないから、ということが被写体と向き合う気持ちをいい加減にしないように気を付けないといけないなあと思わなくもない。こんなことを書くつもりではなかったが、写真を整理していてそんなことを考えていた。
「山の辺の道」は中学校の遠足で歩いたが、不思議なことに周りの風景を全く覚えていない。ただ、途中でほおばったおにぎりの美味しさだけは記憶にある。なぜいまさらここを歩こうと思ったのだろうか。こんな書き方をすると大袈裟な!と思われそうなのだが、たぶんこんなことからだったと思う。
母の実家は近鉄沿線のAという駅前でお菓子屋兼たばこ屋を営んでいる。周りに小売店すらほとんどない村に生まれた僕は子供のころ母の実家と周辺は実に賑やかなところだった。前には本屋があり、寿司屋があった。夜になっても町は明るく、店の椅子に座っていると駅から降りてくるたくさんの人を見ることができ、人がものを買うこととおばあちゃんたちがものを売る様を眺めているだけでも楽しかった。
しかし、最近はほんとうにお客さんが少なくなっていて、駅前通りの小売店では店をたたむところもほとんどで、閑古鳥が鳴いているという表現が悲しいほどにぴったりとなっている。大型スーパーに行けばいろいろな食材と日用品を購入でき、都会に行けば同じ値段でしゃれたものが買えるのだからこれといって特徴のない小売店で買い物をしないことはある意味でしかたがないことなのかもしれない。
そんなことを考えているうちに僕は無性に奈良のどこかを歩きたくなった。10年くらい離れていたが、僕が生まれた地を歩きたくなった。そのとき中学生のころ歩いたこの道が思い浮かんだ。少し大袈裟で飛躍しているように思われるかもしれないが、この話しに偽りはない。
天理駅から歩き始めた。たまに行く龍王山のふもとの長岳寺がコースのほぼ中間地点にあたる。道端では柿やすだち、ミカン、野菜を無人販売所がところどころにある。柿もほとんど収穫されたのか木には実がなかったが、ミカンは豊かに実っていた。畑には大根や白菜、葉牡丹などが植えられていて、軒先には柿と大根が干されていた。
「知らぬ間に歩く者を古代の幻想の世界へと誘ってくれる」と無料パンフレットにあるが、古代についての教養のない僕の目には歩道から見える「現代」しか映っていなかった。現時点において僕は司馬遼太郎の「街道をゆく」のような旅はできないのだ。しかし、それでいいのだ。
(つづく)
ずいぶんと気軽に写真を撮るようになったものだと思う。その一方でずいぶんと簡単に写真を削除しているものだとも思う。削除できるから、ランニングコストがかからないから、ということが被写体と向き合う気持ちをいい加減にしないように気を付けないといけないなあと思わなくもない。こんなことを書くつもりではなかったが、写真を整理していてそんなことを考えていた。
「山の辺の道」は中学校の遠足で歩いたが、不思議なことに周りの風景を全く覚えていない。ただ、途中でほおばったおにぎりの美味しさだけは記憶にある。なぜいまさらここを歩こうと思ったのだろうか。こんな書き方をすると大袈裟な!と思われそうなのだが、たぶんこんなことからだったと思う。
母の実家は近鉄沿線のAという駅前でお菓子屋兼たばこ屋を営んでいる。周りに小売店すらほとんどない村に生まれた僕は子供のころ母の実家と周辺は実に賑やかなところだった。前には本屋があり、寿司屋があった。夜になっても町は明るく、店の椅子に座っていると駅から降りてくるたくさんの人を見ることができ、人がものを買うこととおばあちゃんたちがものを売る様を眺めているだけでも楽しかった。
しかし、最近はほんとうにお客さんが少なくなっていて、駅前通りの小売店では店をたたむところもほとんどで、閑古鳥が鳴いているという表現が悲しいほどにぴったりとなっている。大型スーパーに行けばいろいろな食材と日用品を購入でき、都会に行けば同じ値段でしゃれたものが買えるのだからこれといって特徴のない小売店で買い物をしないことはある意味でしかたがないことなのかもしれない。
そんなことを考えているうちに僕は無性に奈良のどこかを歩きたくなった。10年くらい離れていたが、僕が生まれた地を歩きたくなった。そのとき中学生のころ歩いたこの道が思い浮かんだ。少し大袈裟で飛躍しているように思われるかもしれないが、この話しに偽りはない。
天理駅から歩き始めた。たまに行く龍王山のふもとの長岳寺がコースのほぼ中間地点にあたる。道端では柿やすだち、ミカン、野菜を無人販売所がところどころにある。柿もほとんど収穫されたのか木には実がなかったが、ミカンは豊かに実っていた。畑には大根や白菜、葉牡丹などが植えられていて、軒先には柿と大根が干されていた。
「知らぬ間に歩く者を古代の幻想の世界へと誘ってくれる」と無料パンフレットにあるが、古代についての教養のない僕の目には歩道から見える「現代」しか映っていなかった。現時点において僕は司馬遼太郎の「街道をゆく」のような旅はできないのだ。しかし、それでいいのだ。
(つづく)
#
by charsuq
| 2006-11-27 08:29
| じゃらんじゃらん
|
Comments(0)
Photo album 20 _ Srinagar , India (1998)
カシミールは旅の予定に含まれなかったし、この湖上で開かれる野菜市場は現地で偶然知った。僕をこのバザールに導いたものに感謝。
#
by charsuq
| 2006-11-25 20:33
| Photo album
|
Comments(0)
いつか また どこかで
by charsuq
トライバルラグの販売サイト
オールド・アンティークのトライバルラグ&テキスタイルを販売しています。非売品もあり、ほとんどは値段を表示していませんが、お気軽にお尋ねください。Gallery Forest
1.私へのメールはこちら。その際はタイトルに「旅と絨毯とアフガニスタン」の文字を入れてください。そうでなければ見ずに削除してしまうかもしれません。
2.写真の無断転載禁止。
1.私へのメールはこちら。その際はタイトルに「旅と絨毯とアフガニスタン」の文字を入れてください。そうでなければ見ずに削除してしまうかもしれません。
2.写真の無断転載禁止。
カテゴリ
全体自己紹介
My collection
絨毯 キリム
アフガニスタン
Photo album
じゃらんじゃらん
ブータン
旅
染織と民族衣装
雑記
奈良のこと
美術館 博物館 イベント
読書灯
登山 大峰山系
登山 台高山系
登山 葛城・金剛・紀泉
登山 鈴鹿山系
登山 近畿その他
登山 あれこれ
植物
昆虫
樹木
樹に咲く花
山と野に咲く花
動物 鳥
シダ
食
酒
虫こぶ
イモムシ
きのこ
猫
日本酒(家飲み)
日本酒(外飲み)
銀の街へ
男子の厨房
家族
以前の記事
2024年 03月2024年 01月
2023年 11月
2023年 08月
2023年 07月
more...
お気に入りブログ
イスラムアート紀行部族の絨毯と布 caff...
奈良今昔物語
日本酒のおと
最新のコメント
今週は二日もお会いしまし.. |
by charsuq at 08:57 |
今日日本酒と私でご一緒さ.. |
by fmyr1107 at 21:17 |
鍵コメント様 ok。ま.. |
by charsuq at 20:35 |
奥羽自慢をブログで紹介し.. |
by 奥羽自慢 at 08:35 |
やまぞえくん やっぱ、.. |
by charsuq at 22:15 |
蠍座には私も足繁く通って.. |
by やまぞえ at 00:11 |
じんじさん、僕が1歳のと.. |
by charsuq at 22:19 |
74年に外語卒業前に初め.. |
by じんじ at 11:59 |
じんじさんは猫好きだった.. |
by charsuq at 20:44 |
私が勝っていた猫は白いヒ.. |
by じんじ at 23:08 |