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「更紗今昔物語~ジャワから世界へ」を訪れて

 9月7日~12月5日まで国立民族学博物館では特別展「更紗今昔物語~ジャワから世界へ」が催されている。

 「更紗」って知っているような感覚でいるのだが、簡単に説明してと言われるとなかなか難しい。平凡社の「別冊太陽_更紗」のなかで小笠原小枝さんはこう述べている。

 「さらさ」とは?という問いに対する答えは大変難しい。何故なら、それは特定の染めの技法を指す名称でも、特定の産出国を表す名称でもないからである。あえて言うなら、「近世初頭十七世紀前後から江戸時代を通じて日本に舶載された外来の模様染め布の総称」であろうか。したがってそこには製作地も技法も異にするさまざまな布が含まれている。(中略)唯一共通する点はどれも主として木綿に染められていることであろう。

 そうなのである。インドで生まれた更紗は東西を問わず多くの人を夢中にさせ、各地で製作されるようになる。インドの染織品がインドネシアにもたらされたのは十四~十五世紀頃のようだ。本来は「ロウケツ染」を意味する「バティック」という言葉がジャワ更紗全体を指すようになり、さらに他の国でも使われているほどにインドネシアの更紗の素晴らしい。しかし、この特別展がどうして「ジャワから世界へ」なのかよくわからないまま僕は会場を歩いていた。「インドから世界へ」というのならわかるのに、と思いながら。

 ジャワ更紗、ヨーロッパの近代プリント更紗があり、会場中央にはアフリカの現代プリント更紗が大量に展示されている。
「更紗今昔物語~ジャワから世界へ」を訪れて_f0057070_0465865.jpg

 二階ではビデオで東南アジアやカリブ海諸国、中国の更紗製作・製造工程を見ることができた。インドネシアでのチャンティンやチャップを使ってのロウケツ染めにおける各工程毎のサンプルがあり、色の変化の不思議さに感心した。また、工場ラインでの手押しプリント、スクリーンプリント、ローラープリントなど現代の大量生産工程を見ることができ、それはそれでひとつ勉強になった。

 男性ひとりでじっくりと見学しているのが珍しかったのか、年配の女性の方が「染織をなさっている方ですか?」と声をかけてこられた。
 その方とお話しているなかで「以前ここでジャワ更紗展があったのですよ。今回はその続きということでしょうか」という言葉を聞いて「ジャワから世界へ」という趣旨がわかる気がした。民族学博物館では現代生活様式の展示や研究も行われており、「更紗」を「今と昔」をつなぎ合わせるひとつのものとして取り上げ、グローバルなものの流れとその多様性を伝えたかったのではなかろうか。僕はそんなことを思って会場をあとにした。

 梅田で知人と会い、天丼を食べながら、そういえば天丼のたれをかける道具ってチャンティン(ロウケツ染めに使う道具:参考ブログ_更紗の国から)に似てるよな、とつまらないことを思ったのだった。
 
by charsuq | 2006-10-07 23:55 | 染織と民族衣装 | Comments(2)
Commented by sarasa-reisia at 2006-10-08 02:20
こんばんは
アフリカの更紗は、カラフルですね。
太陽の光が強いから、そうなるんでしょうか。。。
更紗が伝わった経路や歴史を考えるのって、とても楽しいと思います。
それぞれの国が「わが国こそ、発祥の地」と主張するのも、興味深いです。
色々な国の制作現場を見てみたいですね。

天丼のたれをかける道具って、チャンティンに似てるんですか。。?
初めて知りましたー^^;
Commented by charsuq at 2006-10-08 17:58
一部にはジャワ更紗の模様の影響が見られましたが、やはり色彩感覚とデザイン性は地域によってかなり好みが違うものですね。同じ国でも地域によって好みが分かれることもありますが、それって何が影響しているんだろうかと考えることがあります。
チャンティンに似ていると感じるのは僕だけかもしれませんよ。チュチュクのようなものが数本ありワクワクに入れられたたれがそれを通ってご飯や天ぷらにかけられる道具なのですが。


いつか また どこかで


by charsuq

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